パーパス経営とは?意味や取り組むメリット、進め方をわかりやすく解説

会社でミーティングをする女性 経営者


最近は企業理念や企業目標に「パーパス経営」という言葉を取り入れるケースが増えています。このように、パーパス経営は新しい経営スタイルとして注目を浴びていますが、どのような意味かご存じでない方も多いでしょう。

そこで本記事では、パーパス経営の定義、パーパス経営が注目されている背景、パーパス経営に取り組むメリット、パーパス経営が満たすべき条件などについて詳しく解説します。


パーパス経営とは?


パーパス経営とは、企業の企業理念のもとで自社の存在意義を明確にして、その存在意義を中心として経営を実行することです。

パーパス経営を実践している企業は自社の存在意義が明確になっており、働く目的や意義を従業員が良く理解しているので、企業目標の達成に向かって協力して取り組めています。海外では主流の経営スタイルになっており、日本でも徐々に新たな経営スタイルのトレンドになってきています。


そもそも「パーパス」とはどういう意味?


パーパス経営のパーパスとは、英語で目的や意義を意味する「Purpose」に由来します。そこで、企業として社会の中でどのような存在意義を示していくことができるのか、どのよう社会に貢献することが可能なのかといったことを「パーパス」として、企業のビジョンとして提示する経営スタイルを「パーパス経営」と呼んでいるのです。

また社内においてパーパス達成のためのさまざまな取り組みを実施する経営のスタイルも、パーパス経営と言われています。


パーパス経営が注目されている背景

資料を見ながら会議をするビジネスマン


パーパス経営という言葉は以前からありましたが、日本で注目されるきっかけとなったのが、「パーパス経営」(2021年、名和高司著)という本です。この本で著者は、企業の存在意義は業績の良し悪しだけでなく、いかに社会に対して貢献できるのか、存在価値があるのかが重要であることを説いています。

しかし、この本が出版される前の2018年に世界的に有名な投資企業であるブラックロック社のCEOだったラリー・フィンク会長兼CEOが投資先の経営者に対して、「パーパスという意識」という表題で年次書簡を送り、パーパス経営の概念を伝えました。この書簡の内容が、「パーパス経営」の言葉の礎になったとされています。

こうして日本のみならず世界中に広まっていったパーパス経営ですが、なぜ現在大きく注目されているのでしょうか。


DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進


DXとパーパス経営は密接な関係があることから、注目が集まっています。DXとは、企業が新たなデジタル技術を活用してこれまでにないビジネスの創出や既存業務の改善を図ることです。DXを活用する場合には、どのような目的でどうやって社会に貢献できるのかを考える点が非常に重要です。

つまり、DXを推進する場合にはパーパス経営の考え方にもとづいて経営が行われることが必要不可欠なのです。


SDGs(持続可能な開発目標)の推進


最近は積極的にSDGsに取り組む企業も増えてきました。SDGsとは、国連が掲げた2030年までに解決すべき持続可能な17の開発目標を指します。

SDGsに取り組むことで、企業の存在意義を社会にアピールできるので、SDGsとパーパス経営は非常に相性が良いと言えるでしょう。したがって、SGDsに取り組む企業が増えればパーパス経営を実現できる企業も増えることになります。


ミレニアル世代・Z世代の台頭


ミレニアル世代やZ世代の台頭も、パーパス経営が注目されている理由のひとつです。ミレニアル世代とは、1980〜1995年に誕生した世代を指します。ITリテラシーに優れており、デジタル技術の活用に親和性を有する世代です。

一方Z世代とは、1996〜2015年の間に誕生した世代です。この世代は生まれたときからデジタル技術に日常的に触れているので、デジタルネイティブと呼ばれる場合もあります。

これらの世代は企業に対して経済的な価値だけでなく社会的な価値も求める傾向が強いので、企業としてもパーパス経営の実践が必要不可欠になっていると考えられます。


VUCA時代の到来


VUCA時代が到来したことも、パーパス経営が注目されている理由のひとつに挙げられます。VUCA時代とは、Volatility(変動制)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の各単語の頭文字をつなげた造語であり、社会やビジネスにとって将来の予測が困難になる時代を意味します。

例えば、新型コロナウイルスの流行やロシアによるウクライナ侵攻などは誰にも予想できなかったでしょう。こうした時代において、自社の存在意義を明確にして経営を進めていくことには大きな意義があります。このような理由から、パーパス経営に注目が集まっているのです。


これまでの企業理念体系「MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)」との違い


これまでの企業理念の体系であるMVVとパーパス経営は、どのような点が違っているのでしょうか。MVVは企業理念や行動指針を言葉にして設定する経営スタイルであり、パーパス経営に似ているところもありますが、パーパス経営では社会的な連携を重視している点が異なります。

MVVは必ずしも社会的貢献を提示する必要はないのですが、パーパス経営では社会に対して自社がどのような貢献ができるのか提示する必要があります。


パーパス経営に取り組むメリット

顎に手を当てて考えるビジネスマン


企業がパーパス経営に取り組むメリットは以下のとおりです。


意思決定が迅速化される


パーパス経営で設定された目的や意義は、意思決定をする場合の指針になります。意思決定をする際の根拠が明確になっていれば、迅速に意思決定することが可能になります。またパーパスに反した意思決定をすることもなくなるので、無駄な会議をなくすこともできるでしょう。


従業員満足度が向上する


企業がパーパス経営を実践することで、従業員も自分の仕事が社会に貢献しているという意識を持つようになり、従業員満足度が向上することが期待できます。仕事をすることが誇らしくなれば、仕事にやりがいや満足感を得られる従業員が増えるでしょう。


ステークホルダーからの支持を得られる


パーパス経営に取り組んでいる企業には、さまざまなステークホルダーからの支持を得ることが可能になります。なぜなら社会貢献度の高い企業と取引することで、その企業も社会から高く評価される可能性があるからです。


イノベーションの創出につながる


パーパス経営を実践するためには、既存のビジネスモデルを模倣するだけではパーパスを達成できない可能性があります。自社で考えて新たなビジネスを創り出す必要があるかもしれません。

つまり、パーパス経営は新たなイノベーションの創出に役立つ可能性もあるのです。


パーパス経営が満たすべき5つの条件

メモを取りながら話をするビジネスマン


パーパス経営が満たすべき5つの条件は、以下のとおりです。


社会課題を解決できる


パーパス経営は社会課題を解決できるものでなければいけません。さまざまな社会の課題に対して真摯に向き合うことで、自社の存在意義を明確にできるでしょう。


自社の利益につながる


パーパス経営は自社の利益につながるものである必要があります。社会貢献ばかり重視して、肝心の企業利益を損なうようであればパーパス経営とは言えません。そのため自社の利益に結び付くパーパスを設定することが重要です。


自社のノウハウを活かせる


自社のノウハウを活かせることも重要です。自社で実現できないようなパーパスを設定しても、意味はありません。


自社の規模に見合っている


自社の規模に見合わないパーパスを設定すると、無理が生じて経営が上手くいかなくなってしまうおそれがあります。自社の規模に適した無理のないパーパスを設定して経営を実践することが重要です。


従業員の動機付けとなる


パーパス経営は従業員の動機付けになるものでなければいけません。例えば、自分が担当している仕事が社会的に貢献していることが明確になれば、従業員が仕事に取り組む意欲も向上します。


パーパス経営に取り組む流れ


パーパス経営に取り組む流れは以下のとおりです。


1.自社とステークホルダーの分析を行う


最初に顧客調査や外部調査機関による評価にもとづいて、ステークホルダーの分析を実施します。続いて、SWOT分析や3C分析などを用いて自社の分析を行います。


2.パーパスを明確な言葉にして、社内にきちんと共有・浸透させる


自社とステークホルダーの分析が完了したら、自社のあるべき姿を検討してパーパスをわかりやすく設定します。パーパスは経営陣だけで決めるものでなく、従業員が納得できるものであることが必要です。


3.経営やビジネスのフレームワークに具体的に落とし込む


続いて、経営の意思決定プロセスや事業におけるマネジメントプロセスにパーパスを落とし込んでいきます。パーパスにもとづいて具体的な数値目標などを策定することも重要です。


4.日常業務のレベルまでブレークダウンする


最後にパーパスにもとづいた戦略や目標を日常業務レベルまでブレークダウンして落とし込むことが重要です。ただしパーパス経営を実践する場合は、パーパス・ウォッシュ(形式上はパーパスを掲げているのに、実態が伴わない状態)にならないように注意する必要があります。


まとめ


パーパス経営とは、企業が社会に対してどのような存在意義を提示し、どのような貢献ができるのかを「パーパス」として掲げて、その「パーパス」にもとづいて経営を実践していくことを言います。新たな時代における経営モデルとして多くの注目を集めていますので、今後多くの企業がパーパス経営へ移行していくことが予想されます。