合弁会社とは?意味や設立するメリット・デメリット、手続きを解説します

握手をするビジネスマン


合弁会社とは法人の形態のひとつですが、株式会社や合同会社のように会社法に基づいて設立される法人ではありません。それでは、合弁会社とはどのような特徴を持つ会社なのでしょうか。本記事では、合弁会社の特徴、合弁会社を設立するメリット・デメリット、合弁会社を設立する手続きの流れについて詳しく解説します。


合弁会社とは?


合弁会社とは、2社以上の企業が共同事業を行う合弁事業を手掛けることを目的として、複数の企業がそれぞれ資金を出資して、共同株主として設立・運営する会社を指します。合弁会社はジョイント・ベンチャー(Joint Venture)と呼ばれる場合もあります。なお、合弁会社は公正取引委員会の企業結合のガイドラインでは共同出資会社と記載されています。


合弁会社の意味・形態


合弁会社とは、特定の事業目的のために複数の企業が共同出資する会社です。株式会社や合同会社のように会社法で定義されている法人形態とは異なり、会社の設立や運営に関する方法としての呼称となっています。


他の法人形態との違い


会社法では、株式会社、合同会社、合資会社、合名会社という4種類の法人形態が定められています。しかし、合弁会社は、これらの法人形態とは異なり会社法で定められているものではありません。合弁契約に基づいて成立・運営される法人を合弁会社と呼びます。

合弁契約とは、複数の人や企業が会社に対して資本を出資する場合に、会社の運営方法やそれぞれの出資者の権利・役割分担などに関して、出資者間の契約として取り決める契約を意味します。


「合弁」と「連携」はどう違う?


合弁は、合弁会社の出資元企業として複数の企業が参加しますが、連携の場合は企業同士の緩やかな連携の点に特徴があります。一方連携とは、企業が各社の技術を相互に出し合い、共同で研究することによって共通している会社の課題を解決したり、新たに製品開発につなげたりしようとすることです。連携には、資本連携と業務連携という2つの手段がありますが、どちらも企業としての独立性を保持している点に特徴があります。

合弁も連携も事業を強化するという目的は同じですが、企業同士の結び付きという点に違いがあります。合弁は契約で目的が明確になっているので、結び付きも原則として強いです。しかし、連携は企業間のコラボレーションという意味合いが強いので、合弁よりも企業同士の結び付きは緩やかです。


合弁会社を設立するメリット

資料を見ながら話し合う男女のビジネスマン


合弁会社を設立する場合は以下のようなメリットが挙げられます。


新規事業立ち上げや海外進出がしやすくなる


合弁会社を設立することによって、新規事業の立ち上げや海外への進出がしやすくなるメリットがあります。ゼロから新規事業の立ち上げや海外進出をスタートさせる場合には多額の費用や多くの時間が必要です。しかし、合弁会社を設立する際には、自社では保有していなかった技術やスキルを利用することが可能になるので、時間やコストをセーブして新規事業や海外進出に臨めます。


参加企業間でのシナジー効果が期待できる


合弁会社の設立によって、参加企業間のシナジー効果を期待できる点もメリットです。他の参加企業が保有している技術やスキルの活用によって、シナジー効果を生み出すことが可能になります。このように合弁会社の設立によって、会社相互の得意分野を活用することが可能な点は大きなメリットです。


コストやリスクを軽減できる


合弁会社の設立は、コストやリスクを軽減できるメリットがあります。自社1社だけで出資して別会社を設立するよりも、複数の企業で共同出資して会社を設立する方がより少ない費用負担で会社を設立できます。また共同出資しているので、リスクも分散されるメリットもあります。


合弁会社を設立するデメリット

パソコンを開きながら机で打ち合わせをする人 上から見た様子


一方、以下のようなデメリットもあります。


意思決定が遅くなる場合がある


合弁会社に出資している参加企業間で経営方針を巡って対立が生じてしまい、意思決定が遅くなってしまうデメリットが考えられます。合弁会社に対する出資比率に差があったとしても、親会社・子会社のような明確な支配関係がない限りは、対立状態が長引いて意思決定が遅れてしまいビジネスチャンスを逃してしまうおそれがあります。


企業間でトラブル・方針不一致が起きた際の対処が難しい


合弁会社に出資している参加企業間でトラブルや方針不一致が発生した場合には調整・対処が困難になる点もデメリットです。支配関係が明確であれば、支配している企業がリーダーシップを発揮して異なる意見を取りまとめることも可能ですが、支配・被支配関係が明確でない合弁企業においては問題解決まで多くの時間を要するケースがあり得ます。


自社の経営資源やノウハウが流出する可能性がある


合弁会社を設立する場合には、自社の経営資源やノウハウが流出してしまうリスクがあります。合弁会社の設立によって、他社の技術やノウハウを活用することが可能になりますが、その一方で自社の経営資源である技術やノウハウが自社外に流出してしまうことも考えられます。

こうした事態を防止するためには、合弁会社に出資している参加企業間で秘密保持契約を締結しておくことが有用な方法です。


1社が信用をなくすと他の参加企業にも影響する


合弁会社に出資している参加企業のうちの1社が信用を失ってしまうと他の参加企業にも影響が及ぶ可能性があります。具体的には、自社の株価が下落したり、採用の際に応募者が集まらなかったりするなどのデメリットが考えられます。そのため合弁会社を設立する際には、他の参加企業の信用調査をしっかりと実施することが必要です。


合弁会社を設立する流れ

資料を見ながら話し合いをする人の手元


合弁会社を設立する流れは以下のとおりです。

  1. パートナー企業の情報収集と分析
  2. 基本契約書の締結
  3. パートナー企業との主な条件の確認と合意
  4. 合弁契約書の締結
  5. 合弁会社の設立


1.パートナー企業の情報収集と分析


合弁会社を設立する場合には、共同して合弁会社に出資するパートナー企業について情報を収集して分析することから始めます。合弁会社を成功に導くためには、最初に情報収集と分析はしっかりと行うことが重要です。


2.基本契約書の締結


パートナー企業の情報収集と分析が完了したら、パートナー企業と交渉を行い、基本的な事項(合弁会社の目標、企業理念、スケジュール、経営課題など)について合意し、基本契約書を締結します。


3.パートナー企業との主な条件の確認と合意


基本契約書を締結したら、具体的な合弁条件(法人形態、出資比率、取締役選定、株式種類など)についてパートナー企業と確認・合意します。


4.合弁契約書の締結


パートナー企業と詳細な条件について合意したら合弁契約書を締結します。技術やスキルの流出を防ぐために、秘密保持条項の記載も必要です。必要であればライセンス条項も盛り込みましょう。


5.合弁会社の設立


合弁契約書の内容に沿って合弁会社を設立します。


まとめ


合弁会社とは、会社法には定められていない法人の形態のひとつです。合弁会社を設立する場合には、メリットとデメリットをしっかりと理解したうえで、情報の収集・分析を実施し、自社にとって適切なパートナーを見つけることが重要です。

合弁会社を設立する場合には、中小企業診断士のサポートを受けることが有用です。「中小企業診断士」という資格は、「国が認めた唯一のコンサルタント資格」とも呼べる国家資格です。中小企業診断士の資格を保有していると、財務・マーケティング・IT・法務・助成金制度・生産現場の知識・店舗運営知識など、経営に関わる幅広い内容を学べます。

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