LBO(レバレッジド・バイアウト)とは?|メリット・デメリット、成功のポイントを紹介

M&Aと聞くと、以前はハゲタカ(外資系企業)が会社を乗っ取るという強いイメージがありましたが、昨今では「M&A」による事業継承が企業の成長戦略として一つとして積極的手段と考えられるようになっています。

そうした中で、M&A対象社の信用力に合わせて合わせて、少ない資金でも実施できる方法としてLBO(レバレッジド・バイアウト)が注目されています。

この記事では

  • LBOとは何か
  • LBOの仕組み&スキーム
  • LBOのメリット・デメリット
  • LBOで成功するポイント

LBOをわかりやすく解説していきます。

LBO(レバレッジド・バイアウト)とは

 LBOは「Leveraged Buyout(レバレッジド・バイアウト)」の略称です。

Leveragedはてこの原理を意味し、Buyoutは企業買収を意味します。

買収資金の調達では、買い手(譲受企業)が売り手(譲渡企業)の資産や将来見込まれるキャッシュフローなどを担保として金融機関などから融資を受けて資金調達をするところに特徴があります。

LBOはローリスク・ハイリターンのM&A

LBOでは自己資産を抑えて企業買収を実施できるのが最大の特徴。

少ない投資資金で利益を大きく得られるローリスク・ハイリターンのM&A手法といえます。

LBOが使用されるケース

LBOが使用されるケースとしては投資目的が主ですが、新しい事業分野に進出するためにも用いられます。

<日本での事例>

  • 2005年ライブドアによるニッポン放送買収未遂
  • 2006年ソフトバンクによるボーダフォン買収

LBOの中のMBO・EBO

LBOの手法としてMBO「Management Buyout」とEBO「Employee Buyout」があり、主に経営陣を交代させて経営状況を好転させることを目的とします。

LBOは企業である第三者が買い手となるのに対して

  • MBOは自社の経営陣が買い手
  • EBOは自社の従業員が買い手

それぞれの買収資金は銀行・投資ファンドなどから融資・出資により調達します。

LBOの仕組みと実行のスキーム

LBOは元々、金融機関が大きな利益を得ることができる新規投資先を得るために開発した手法です。

その特徴としては、借り入れは「売り手企業」の資産やキャッシュフローが担保となる点で、「買い手企業」は自分よりも大きなサイズの企業の買収が狙えます。

LBOは自己資金を持たない会社の有効な買収手段

買収対象となる「売り手企業」が借り入れを行うので、返済は「売り手企業」が負います。

LBOでは借り入れの返済において、より大きなリターンを望める会社とのM&Aが行われるケースが多く、ビジネスの現実的なシナジー効果を目的とするケースよりも、投資ファンドが売買益を獲得することを目的として活用するケースが圧倒的に多い状況です。

LBOを実行のスキーム

LBOを実行する際は、一般的に以下のスキームで進みます。

  1. 特別目的会社(SPC)の設立
  2. 買収資金の借入などの資金作り
  3. M&Aの実行
  4. 買収対象企業とSPCの合併
  5. 借入金の返済

①特別目的会社(SPC)の設立

LBOにおいての「買い手企業」は特別目的会社(SPC)を設立し、買い手企業と融資元の金融機関はSPC(特別目的会社)に買収資金を準備します。

SPCは、売り手企業(買収対象企業)の株式の買い取りが目的です。

買収対象企業(売り手)は株式売却の対価としてSPCから現金を受け取り、SPCに株式を移す流れとなります。

②買収資金の借入などの資金作り

買い手企業は金融機関などから借り入れを行いますが、金融機関側は融資の返済が焦げ付くと大きな損失を被るので、買収対象企業の資産やキャッシュフローなどの調査を入念に行います。

金融機関は、LBOで融資する際には金利は高めに設定するので、金利分も含めて返せる資産や収益力があるか否かを調査・判断します。

LBOの際は、なるべく借入金を多くして自己資金を少なくするのが良いでしょう。
自己資金が多い状況では数年後のキャッシュフローの金額自体は借入の際よりも大きくなりますが、利益率においては借入金額を多くした方が利息分を差し引いても利益獲得がより多く期待できます。

③M&Aの実行

資金が集まり次第、買収を実行していきます。

SPCは100%の株式取得を目指してM&Aを行い、M&Aが完了するとSPCは親会社、買収対象企業は完全子会社です。

SPCと買収対象企業とのM&Aでは、SPCは買収対象企業の株式と多額の債務を保有していることになります。

④買収対象企業と特別目的会社の合併

SPCは買収対象企業と合併することにより消滅し、多額の債務は買収対象企業に移ります。
したがって、金融機関などへの返済義務は買収対象企業が負うのです。

SPCと買収対象企業との合弁のもう一つの目的は、買収対象企業を非上場企業に変更することです。
買収対象企業を非上場企業に変え、他企業のM&Aによる参入の防止を図ります。

⑤借入の返済

LBOによるM&Aが終了すると買収対象企業は返済を開始します。

返済には、買収された企業は余剰資金(買収後や資産売却によって得た現金)などを最大限使って返済を進めます。

そのため、買収された企業は返済終了まで制約の多い経営を強いられますが、買収後に経営状態を改善できれば、返済は滞りなく進められます。

LBOのメリット・デメリット

ここでは、LBOに関する以下のメリット・デメリットを解説します。
 

  1. 買い手企業(買収側)から見たLBOのメリット
  2. 売り手企業(買収対象側)から見たLBOのメリット
  3. 融資先(金融機関)から見たLBOのメリット
  4. 買い手企業(買収側)から見たLBOのデメリット
  5. 売り手企業(買収対象側)から見たLBOのデメリット
  6. 融資先(金融機関)から見たLBOのデメリット

1.買い手企業(買収側)から見たLBOのメリット

  • 少ない自己資金での企業買収
  • 最小のリスクによる企業買収

買い手企業(買収側)がLBOを行うメリットは2点が挙げられます。

少ない自己資金での企業買収

LBOは、買収対象企業(売り手)の資産や収益力を担保に、金融機関などから買収資金を借り入れるので、買収側企業(買い手)は自己資金を抑えて買収が可能となるメリットがあります。

<例>
買収対象企業の価値が100億円だとして、自己資金100億円で買収したとします。
その後、買収対象企業の企業価値が120億円に上がると、買収側企業は20%の利益率です。
しかし、LBOによって100億円の企業を自己資金20億円(+80億円はLBOによる融資)で買収し、120億円に企業価値が上がった場合、利益率は100%です。

LBOでは少ない自己資金で買収できるので、買収対象企業の企業価値が向上した際の利益率が高くなります。

最小のリスクによる企業買収

LBOで企業買収した際、LBOで調達された借入金の返済は買収された企業が負うので、買収側企業のリスクはM&Aのために支出した自己資金の範囲にとどまるメリットがあります。

<買収側企業が責任を負う場合>
ただし、実際には買収された企業が返済できなくなった場合は民事再生法において適用会社とと判断されると買収側企業も責任を求められます。

2.売り手企業(買収対象側)から見たLBOのメリット

  • 通常よりも高額の売却益を得られる

LBOの実行において、SPCは株式を買い取る際に適正な株価にプレミア価格を上乗せせざるを得ませんし、それが一般的です。

そのため、株式の売却においての売却益は通常よりも高いものを得ることができます。

LBOによって買収対象企業は買収された後、制約の厳しい中事業を続けることになります。
買収対象企業の経営に携わってきた経営者や役員などは、大きな利益が享受できることを考えても、思い入れのある会社を売ることに抵抗を感じる人も少なくないようです。

3.融資先(金融機関)から見たLBOのメリット

  • 融資が高金利

LBOにより金融機関などが融資を行う際、通常の利息よりもかなり高い利率で融資するので買収された企業の返済がしっかりと回れば、金融商品として大きな利益を生みます

金融機関からするとLBOはリスクの高い融資なので、高利率に設定しているのが一般的です。
そのため、融資側の金融機関などはLBOが成立すると資金回収に全力を尽くします

4.買い手企業(買収側)から見たLBOのデメリット

買い手側から見たLBOのデメリットは以下の2つです。

  • 買収後の企業に高金利の借入を背負わせる
  • 経営改善で利益を生み出す必要がある

買収後の企業に高金利の借入を背負わせる

LBOによって買収された企業は、優良企業であったとしてもM&Aで大きな債務を負います。

買収側では、優良企業に債務を負わせることに対してプレッシャーを感じる経営者も少なくないようです。

LBOに関する考え方は買収側当事者によって大きく変わり、いわゆるハゲタカファンドと呼ばれることもある投資ファンドのように、ドライに目的を遂行していくケースもあるなどもあります。

経営改善で利益を生み出す必要がある

自己資金にレバレッジを効かせ大きなM&Aを仕掛ける仕組みがLBOの特徴です。

しかし、買収した企業が損失を出すと、買収側企業は実際以上の損失を被ります

<例えば>
企業価値100億円の企業を自己資金100億円でM&Aし、その後買収対象企業の企業価値が80億円に下がると買収側企業は20%のマイナスです。
しかし、LBOによって100億円の企業を自己資金20億円(+80億円はLBOによる融資)で買収し、企業価値が80億円に下がると買収側は100%のマイナスとなります。

5.売り手企業(買収対象側)から見たLBOのデメリット

  • 経営権・発言権を剥奪される

LBOにおいては、買収側は株式の100%を取得を目的としているので、買収された企業の経営陣は多くの場合、退陣を求められ経営権や発言権を実質的に失います

投資ファンドのM&Aの場合、買収した企業の企業価値を短期間で大きく向上させ再販することが目的としています。
買収した企業を長期的戦略で成長させていく考えはなく、しかも買収された企業が投資ファンドに対抗する手段はありません。

⑥融資先(金融機関)から見たLBOのデメリット

  • 融資金を全額回収できない可能性がある

金融機関などはLBOが成立後、融資した資金の回収率を上げるため、買収された企業に対してさまざまな制約を取り決めて返済プランを課します。
しかし、買収された企業が返済できなく焦げ付くリスクは低くありません。

LBOで成功するポイント

LBO成功のポイントとして、以下3つがあります。

  1. 金融機関・融資先による制約条件をクリアする
  2. 経営が比較的安定した会社を買収する
  3. ノウハウなどが共通する企業を買収する

金融機関・融資先による制約条件をクリアする

LBOでは、融資元金融機関から厳しい制約を課されます。

LBOにおいては制約条件にきちんと対応しなければ、結果として失敗を招いてしまう可能性が高いです。

具体的には、LBOの際には以下の制約を金融機関から受けることになります。

  • 買収する企業はモニタリングを受ける
  • コベナンツを結ぶ

買収する企業はモニタリングを受ける

金融機関はLBO当事者である買収に関わった両企業をモニタリングします。

買収された企業のみならず、親会社である買収企業は数多くの資料や報告書の提出を随時要求されるでしょう。

金融機関のモニタリングで要求される全てに対応するのは、かなりハードルの高い作業ですが客観的なモニタリングによって経営上の課題を発見することも少なくありません。

コベナンツを結ぶ

コベナンツとは、買収側企業が金融機関などから融資を受ける際に結ぶ誓約条項です。

コベナンツには下記のことが細かく規定されています。

  • 実行しなければならない義務
  • 行ってはならない禁止事項
  • 最低限クリアしなければならない財務状況

買収企業にとってコベナンツは厳しい制約といえますが、コベナンツを守ることが事業計画からの逸脱を防ぎ、事業の健全性を保つという面も多いにあります。

経営が比較的安定した会社を買収する

LBOにおいては、下記の要件を持つ買収対象企業ほど買収後の成功率が上がるとされています。

  • 買収対象企業の経営が安定している
  • キャッシュや現金化しやすい資産を多く持っている
  • 負債が少ない

<例えば>
都市部の私鉄鉄道会社の時価総額が市場から過小評価されていて、企業価値の向上方針が見えやすいと仮定した場合。
そうした私鉄鉄道会社の多くは、沿線の不動産を大規模に保有し、経済環境に大きく左右されることなく安定した利用客数が見込め、LBOの成功率が高くなります。

ノウハウなどが共通する企業を買収する

投資ファンドではなく事業会社がLBOを成功させるには、自社とシナジー効果が高い企業をM&Aすることも成功の鍵となります。

投資ファンドの場合は、買収対象企業の事業に精通したコンサルタントやM&A仲介会社に依頼したり、外部経営者を招いたりするなどの戦略が必要です。

LBOは慎重に検討して行いましょう

LBOは自己資金が少ない企業でも自社よりもサイズの大きい企業を買収することが可能なM&Aの一つです。

しかし、メリットだけに注目するのではなく、デメリットもしっかりと踏まえて検討することが重要です。

そしてLBOにおいては下記が成功の鍵となります。

  1. 金融機関・融資先による制約条件をクリアする
  2. 経営が比較的安定した会社を買収する
  3. ノウハウなどが共通する企業を買収する