企業経営や組織編制において欠かせないのが、人員配置による人的資源の管理です。
この記事では企業経営における人員配置の方法やポイントを紹介します。
使えるツールも紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
<この記事で分かること> ・企業経営における人員配置の意味や目的とメリット ・人員配置を行う具体的な方法を知りたい ・人員配置におすすめのアプリを知りたい
人員配置とは何故必要?
企業は人員配置によってマンパワー(人的資源)を適切に配分し、事業を効率的に運営していかなければなりません。
企業経営における人員配置の必要性や、人員配置をするうえでの注意事項を確認していきましょう。
企業経営における人員配置とは
人員配置とは、企業が従業員を効率的に機能させるため、適切な組織やポジションに人材を配置する経営マネジメントです。
経営者は、従業員のスキルや経験を総合的に判断して、適切な人員配置をしなければなりません。
従業員の昇給や異動だけでなく、新規採用やリストラなどの入れ替えなどの方法があります。
経営資源の有効活用
企業にとって、人員配置は経営資源を有効活用するためのマネジメントといえます。
経営資源とは、企業が事業を動かすための資源(リソース)を指す言葉です。
経営者は人的資源を最適に配分して事業を成立させます。
経営資源の中でも「ヒト」に関わるものが「人的資源」です。
人員配置は人的資源を最適に管理するために有効な考え方となります。
<企業経営における6つの経営資源とは> 「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」に加えて近年では「時間」や「知的財産」を含めた6つの経営資源があるとされています。 経営者は6つの経営資源を効率的に活用することで効率的な経営を実現します。 「ヒト」に関連する経営資源は「人的資源」と呼ばれ、企業は人事部など人的資源を管理する専門部署の設置が必要です。
人員配置の言い換え
「人員配置」を他の言葉で言い換えると「人員調整」があります。
人員配置と人員調整はほとんど同じ意味です。
従業員によるマンパワーを適切に再配分するニュアンスで使われます。
英語で人員配置を言うと?
人員配置には多くの意味合いがあるため、英語でも多様な訳し方があります。
以下は人員配置を英訳するときの例です。
【人員配置の英訳】
distribution of personnel
personnel distribution
personnel positioning
staff assignment
staff allocation
「適材適所」と「適所適材」の違い
人員配置には「適材適所」と「適所適材」という2つの考え方があります。
「適材適所」は空いた人材を適切なポジションに配置する方法です。
「適所適材」では、空いたポジションに適した人材を配置します。
似ているように見えるかもしれません。
しかし「適材適所」では人材の価値を優先し、「適所適材」では空いているポジションの価値を優先するという違いがあります。
人員配置4つのメリット
企業はなぜ人員配置をする必要があるのでしょうか。
人員配置を管理するメリットとして、以下4点が挙げられます。
- 属人化の防止
- 人材を成長させる
- 社員のモチベーション向上
- 人件費の削減
企業は人員配置によって適切な経営資源を管理することで効率的な事業が展開できるのです。
メリット1:属人化の防止
適切な人員配置は属人化の防止に期待できるのがメリットです。
属人化とは、特定の業務が1人の担当者にしかできない状態を指します。
同じ業務を1人がずっと担当していると、他の人にはその業務が一切分からない状態になるでしょう。
しかし定期的に人員配置で担当を変えれば、業務を他の担当者に引き継げて属人化を防止できます。
属人化の防止によって業務を棚卸しできるため、不要な業務の洗い出しにも繋がるでしょう。
メリット2:人材を成長させる
人員を適切な部署に配置すると、人材を成長させられるのもメリットです。
ジョブローテーションなどの社内制度を活用すれば、社員を計画的に育成できるでしょう。
<ジョブローテーションとは> ジョブローテーション制度とは定期的に従業員の異動や配置転換を行うことです。 多様な部署や職務を経験することで広い視点を持った従業員を育成できるメリットがあります。
メリット3:社員のモチベーション向上
人員配置で従業員(社員)が希望する部署に配置すると、社員のモチベーション向上に繋がるのもメリットです。
定期的に社員の希望部署をヒアリングするほか、キャリアプランを共有することで社員のモチベーションを高められるでしょう。
メリット4:人件費の削減
人員配置によって人材を適切な場所に配置すると、人件費の削減に繋がるのもメリットです。
社員を1人採用するには多大なコストがかかります。
しかし人材を育成すると少ない人数で業務を回せるようになるでしょう。
人員配置4つの種類
人員配置の方法は、おもに以下4種類です。
それぞれの方法やメリット・デメリットについて見ていきましょう。
人員配置の方法 | メリット | デメリット |
---|---|---|
異動・配置転換 | 既存の従業員を活用できる | モチベーション低下や離職リスク |
採用 (新卒採用・中途採用) | 外部の人材を新規に活用できる | 採用コストがかかる |
雇用形態の変更 | 従業員のモチベーションを高められる | 昇給する場合にコストがかかる |
リストラ | 企業の若返りや組織の活性化 | モチベーション低下や離職リスク |
種類1.異動・配置転換
異動や配置転換は、既存の社員(従業員)を別のポジションに入れ替えることです。
社員本人の希望のほか、従業員の能力や適性を総合的に鑑みて部署移動などの配置転換を行います。
配置転換をすることで社員の能力が向上して生産性を高められます。
ただし、本人が希望しない配置転換はモチベーションの低下や離職の原因に繋がることがあるため注意しましょう。
種類2.採用(新卒採用・中途採用)
新しい人材を採用するのも人員配置における方法の1つです。
新卒採用は正社員として就労経験のない学生を対象に採用を行います。
中途採用はすでに経験のある人材を対象した採用です。
中途採用は他の企業で実績のある優秀な人材を採用できるメリットがあります。
新卒採用は採用コストを抑えられるのがメリットです。
若くて体力のある人材を雇えて、企業理念も浸透させやすいでしょう。
種類3.雇用形態の変更
雇用形態の変更も人員配置の1つです。
例えば、アルバイトや非正規雇用の社員を正社員に登用するなどが挙げられます。
社員のモチベーションを上げて生産性の向上に期待できるでしょう。
種類4.リストラ
リストラによる人員削減も、人員配置の1つです。
日本の慣習ではリストラは悪く捉えられがちですが、業績悪化や事業規模縮小によって、やむを得ずリストラを選択せざるを得ない場合もあります。
近年では、組織の若返りを目的にリストラをする、いわゆる「黒字リストラ」のケースも多いです。
<黒字リストラとは?> 黒字リストラとは黒字経営のまま企業の将来性を見据えてリストラを行うことです。 赤字によって止むをえずリストラを行うというネガティブな理由ではなく、組織を活性化するポジティブな理由で黒字リストラが行われます。
人員配置の方法
人員配置をするには、エクセルやアプリなどのツールを活用して人員配置表を作成します。
人員配置表を作成することで従業員ごとの人事情報を簡単に管理可能です。
人員配置表を作成する
人員配置表とは人員配置を管理するために管理する一覧表です。
一覧表があれば従業員の給与や年齢などの属性が可視化され、人員の配置状況も一元管理できます。
また従業員がどのような経験をしてどのような業務に携わっているのかの確認も可能です。
人員配置表を作成する際には、以下の情報を入力して従業員と業務の一覧表を可視化しましょう。
<人員配置表を作成する際に入力が必要な項目の例> ・給与 ・年齢 ・雇用形態 ・経歴 ・勤怠時間 ・売上実績
エクセルで人員配置
人員配置表を手早く作成するならエクセルが便利です。
エクセルは普段から事務作業で使っているケースが多いため、誰にでも扱えるでしょう。
ただしまとめた情報が煩雑になりがちなため注意が必要です。
アプリで人員配置
人員配置アプリあるいは人事管理システムを活用すれば、人事情報を手軽に管理できます。
入力した人事情報はシステムに登録されるため、必要な時にいつでも引き出すことが可能です。
アプリで人員配置をするポイント
アプリや人事管理システムで人員配置をする際は、以下のポイントに注目しましょう。
- 異動希望をヒアリングする
- 人材配置の効果測定
異動希望をヒアリングする
人員配置を行う際には、社員本人の意思を尊重することが重要です。
人事側が適正のある人材だと判断しても、本人に異動の希望がないと想定している効果を生みません。
異動希望を効率的にヒアリングするにはアンケートの実施が有効です。
異動希望がある場合、面談を行って人員配置の計画を実行します。
人員配置の効果測定
人員配置は実行して終わりではなく、効果の測定が必要です。
人員配置を行った結果として生産性が向上したのか、現場の効率は改善したのかを調査します。
従業員の満足度を調査して、人員配置の計画に関するフィードバックを行うことも有効です。
人員配置アプリの導入事例:総合建設業の事例
総合建設業での、人材アプリの導入事例を紹介します。
中小機構で紹介を行っている事例です。
同社では複数の作業現場を並行することが多く、効率的な人員配置が求められていました。
そこで人員配置アプリを導入することによって社員の稼働状況を可視化し、ITの力で適材適所の人員配置を行ったのです。
効率的な人員配置を実施するために、ADK富士システム株式会社様の「人員配置システム」を導入しました。ADK富士システム株式会社様では過去にも同様のシステムを作っていたので、細かなすり合わせをしつつ、1年くらいかけて一緒にシステムを作り上げていきました。新たなシステムにはまだ不慣れなところもあるため、現在当該システムで人員配置をできるのは、管理側の社員2名のみに限定しています。皆が人員配置できてしまうと現場の混乱にもつながるため、管理を一元化できるような体制としました。
(引用:ITで作業員の稼働状況を確認、適材適所の配置を実現 | 導入事例 | ここからアプリ)
電話による指示では人員配置の効果が悪く生産性が落ちるという課題を抱えていましたが、人員配置アプリの導入で生産性の向上を実現しています。
また、管理側で人員配置の情報を共有しやすくなったため従業員の動きを適切に管理できるようになったとのことです。
開発したシステムでは、誰がどの現場にいるのかを一目で把握できるようにしました。たとえば特殊な機械を操作できる社員が必要となった際、その社員の稼働状況をすぐに把握し、人員調整ができる体制を整えています。これによって適材適所の人員配置ができるようになりました。どこの現場にマンパワーが必要で、逆にどこの現場に余裕があるのかを把握できるので、管理側の不安もありません。
(引用:ITで作業員の稼働状況を確認、適材適所の配置を実現|中小機構)
適切な人員配置で人的資源を管理しよう!
人員配置は、企業が持つ貴重な人的資源を有効活用するために必要な経営戦略の1つです。
従業員を適材適所あるいは適所適材な業務を担当させることで限られた人的資源を有効活用できます。
人員配置によって従業員の業務効率改善を期待できるほか、人件費の削減も期待できるでしょう。
人員配置を実施するためにはエクセルや人員配置アプリなどのツールを活用します。
システムを活用して人員配置を適切に管理し、有効な人事戦略を実施しましょう。