経営戦略を大きく左右する企業ブランドを構築するためには、リブランド戦略が重要です。
リブランド戦略は企業の根幹にある企業理念と、市場からのイメージのギャップを埋める戦略です。
この記事ではリブランドの意味やリブランドを成功させるポイントを紹介します。
成功事例と失敗事例を紹介するので、リブランドのコツを学んでいきましょう。
<この記事で分かること>
・リブランドの意味とは?
・リブランドを成功させるポイントとは?
・リブランドの成功事例や失敗事例を知りたい!
リブランド(リブランディング)の意味とは?
リブランドとは、時代や市場におけるニーズの変化に合わせてブランドのあり方を見直す活動です。
企業は市場において、他社と差別化するためにブランドを構築します。
ブランドを構築する活動をブランディングといいます。
企業はブランディングによって自社および自社の製品・サービスを顧客に周知してもらい、マーケティング活動に役立てるのです。
ブランディング戦略はいつでも上手く進むとは限りません。
必要に応じて現状と理想のギャップを埋めるリブランディングが必要とされます。
【リブランドの例】
・既存のブランドが陳腐化してしまい効力がなくなってしまった
・時代の流れとともに顧客のニーズが変わってブランドの価値が低くなってしまった
ブランドの根幹は変えない
リブランドで注意したいのが「ブランドの根幹は変えない」ことです。
リブランドでの失敗として、ブランドを根本から変えてしまって既存ユーザーを失ってしまうことが挙げられます。
リブランドをする際はブランドの根幹を残しつつ、ブランドの表面にある強みやブランディング戦略の方法を変えることが有効です。
リブランディングの言い換え表現
リブランディングを他の言葉に言い換えると「ブランド再生」「ブランド再構築」といった表現が適切です。
古くなったブランド価値を見直し、再びブランドとして活用します。
なぜリブランディングが必要?
リブランディングが必要なのは、顧客や市場のニーズが変わっていくものだからです。
企業のブランド戦略も、時代のニーズ変化に応じてリブランドしていかなければなりません。
リブランドを進める方法
リブランドの手順は以下の通りです。
- 現状分析
- ブランド戦略の実施
- リブランドの測定
手順をチェックしてみましょう。
現状分析
リブランディングを実施するには、まずブランドの現状を分析します。
自社ブランドが市場でどれだけ周知されているのか分析することでブランド価値の測定が可能です。
ブランドが周知されていない場合、ブランド戦略を見直す必要があります。
リブランディングの実施
現状を分析して課題が明確になったら、具体的なリブランディング戦略を実施します。
ブランド戦略の具体的な案としては以下の例が挙げられます。
- ロゴ変更
- ターゲットの変更
- 商品内容の変更
- 広告
例えば、ロゴ変更では企業が提示するブランドの価値を改めて市場に示すことが可能です。
広告戦略の見直しで一般消費者にブランドの価値を示すこともリブランディングの一種となります。
リブランドの測定
リブランドを実施した後は、リブランディングの効果が適切に表れているか測定します。
測定するためには売上高や利益率など、定量的な目標を設定すると効果的です。
リブランドを成功させる4つのポイント
リブランドを成功するポイントとして、以下4点が挙げられます。
- 既存ブランドを活用する
- 現状と理想のギャップを分析する
- 市場でのポジションを確認する
- 中長期的な計画を立てる
4つのポイントについても1つずつ紹介します。
ポイント1.既存ブランドを活用する
リブランドでは既存ブランドを有効活用するのがポイントです。
ブランドそのものが持つ資産価値を「ブランド・エクイティ」といいます。
ブランドには顧客を引き付けて購買活動を引き起こす効果があるため、売上アップを促す資産価値があると考えるのです。
リブランドをする際は、ブランド・エクイティがもたらす資産価値を無視するような大幅なブランド刷新は好まれません。
これまでに醸成したブランドという資産を有効活用してブランディング戦略を練る必要があります。
ポイント2.現状と理想のギャップを分析する
リブランディングにおいては現状と理想のギャップを分析するのも大切です。
ブランドでは企業理念を掲げて、自分たちが大事にしている理想を示します。
しかし、当初想定していた企業理念が市場や顧客に届いていない場合は、ブランディング戦略を考え直さなければなりません。
ギャップを分析するためには社内アンケートや顧客アンケートなどの調査が有効です。
ポイント3.市場でのポジションを確認する
リブランディングを行う際は市場におけるポジションの確認も必要です。
市場において競合他社と比べた時、自社がどのような強みを持っているのかを分析します。
たとえば、品質に重きを置くのか価格に重みを行うかでブランド戦略が異なるでしょう。
ポイント4.中長期的な計画を立てる
リブランディング戦略では、市場の動きを見ながら中長期的な計画を立てます。
プロジェクトチームを編成して、組織として対応しなければなりません。
組織として動くことで戦略を客観的に見やすくなります。
複数人で動くことによって多角的な物の見方ができるようになるのです。
リブランドの成功事例
リブランドを成功させるには、実際の成功事例から手本を真似しましょう。
ここでは、リブランドに成功した事例として国内の3社を紹介します。
ヤンマー
ヤンマーは発動機や農機などの製造や販売を手掛ける日本のメーカーです。
同社は「ヤン坊マー坊天気予報」のCMを打ち出し、日本では農業メーカーの印象が根付いていました。
しかし、ヨーロッパではヨットのエンジンメーカーとして知られています。
ブランドの周知が国ごとに異なるというギャップを抱えていたのです。
2012年に創立100周年を迎えたヤンマー社は、企業ブランドを大きく見直しました。
ヤンマーはリブランドで新しいブランド価値を伝える際、「丁寧に確実に」伝えていくことを意識したといいます。
そして「A SUSTAINABLE FUTURE」というテーマを掲げ、地球環境に優しく持続可能な環境を実現する企業だと伝えることに成功したのです。
ヤンマーの事例は、既存のブランドと現在求められている企業像とのギャップを埋めることに成功したリブランドの成功事例として広く知られています。
虎屋
虎屋(とらや)は、室町時代に創業した老舗の和菓子会社です。
虎屋では、「おいしい和菓子を喜んで召し上がって頂く」という企業理念をモットーに、500年の伝統を守り続けています。
しかし、虎屋は顧客に喜んでもらうためには変化することも厭いません。
500年間受け継がれてきた伝統を大切に守りながらも、今手に入る最高の原材料と技術を用い、よりおいしい菓子をおつくりし、世界中のお客様にお届けする。それこそが、わたしたちの大切な使命だと思っています。
引用:虎屋
「おいしい和菓子を喜んで召し上がって頂く」。この言葉を常に問い続け、今もこれからも、愚直に、誠実に、菓子づくりに励んでまいります。
虎屋はブランドの根幹である企業理念を大事にしながらも時代に合わせたブランドの変革を続けるリブランディングの好例といえるでしょう。
湖池屋
湖池屋はスナック菓子等を製造・販売する日本の菓子メーカーです。
「ポテトチップス」や「カラムーチョ」など人気のスナック菓子を販売しています。
2019年、湖池屋は新時代のポテトチップスとして「KOIKEYA PRIDE POTATO」というブランドを発売しました。
同ブランドではじゃがいも本来のおいしさを届けるために製法を一新し、軽快で心地よい食感を実現しています。
また「KOIKEYA PRIDE POTATO」の美味しさを伝えるためにパッケージデザインも一新されました。
白地に深みのある赤で目を引き、立体的にチップスを並べた写真で新しいポテトチップスのイメージを届けています。
湖池屋のリブランドでは従来のポテトチップスの美味しさを守りながら新しいポテトチップスのイメージを届けることに成功しています。
素材、皮の剥き方、洗い方、揚げ方、厚さ、油の種類、仕上げなど、まるで料理を作るように、ポテトチップスづくりにこだわっていた創業時代の情熱を胸に、日本産のじゃがいもを100%使用し、素材も製法も一切の妥協なく、老舗・湖池屋のプライドをかけて理想のおいしさを追求したものが「KOIKEYA PRIDE POTATO」です。
引用:湖池屋
リブランドの失敗事例
世界的な企業でも、リブランドに失敗している例があります。
ここでは、3社の失敗事例を紹介するので、リブランドでやってはいけないことを学んでいきましょう。
コカ・コーラの「ニューコーク」
飲料メーカーとして世界的に成功しているコカ・コーラですが、1985年に発表した新商品はリブランドの失敗事例とされています。
1985年、ペプシ・コーラと対抗するためにコカ・コーラ社は「ニュー・コーク」という新商品を開発しました(ペプシコーラとコカコーラの対決はコーラ対決と呼ばれることもあります)。
ニュー・コークは20万人の消費者を対象に試飲を実施したうえで、同社が自信を持って売り出した商品のはずでした。
ところが、新商品のニュー・コークは市場から敬遠され売上は振るいませんでした。
市場は慣れ親しんだコカ・コーラの味が奪われたことに失望して、結果としてコカ・コーラ社の売上は大きく落ち込むことになってしまったのです。
「ニューコーク」の失敗事例はマーケティングにおける失敗の教訓として広く知られています。
リブランド戦略において既存のブランド価値を無視すると、顧客も失望してしまいかねません。
Gap
アメリカ最大のアパレル小売店であるGapは、ロゴデザインリニューアルでの失敗が知られています。
Gapでは、2010年にロゴを従来のデザインから新しいデザインに変更しました。
濃い青色を背景にGapの字を白抜きしたのが従来のデザインです。
新しいデザインは、Gapの字の右上に青くグラデーションされた小さい四角が重ねられたものでした。
ところが、新しいデザインがユーザーから猛烈な反発を受けたのです。
Gapでは、デザインの変更実施からわずか数日で旧デザインへ戻すことを余儀なくされました。
ユーザーの反発を招いたのは、使い慣れたロゴが一気に変わってしまったことが原因とされています。
Uber
Gapと同じくロゴの刷新によるリブランドの失敗例として知られているのが、宅配サービスなどを展開するUberです。
Uberは頭文字の「U」を基調とするデザインでしたが、2016年に「原子」を基調とする斬新なデザインに刷新しました。
このデザインは、UberのCEOであるTravis氏が先導して刷新したものです。
ところが、刷新されたデザインが市場には受け入れられることはありませんでした。
消費者から「UberのUが消えて何のデザインなのか分からない」など不満の声が上がったのです。
ロゴ変更が失敗したのは、デザイナーではないTravis氏が先導したためであると言われています。
リブランドには適切なプロジェクトチームを編成して各メンバーがそれぞれの役割を担い、組織立ってプロジェクトを進めていく必要があると言えるでしょう。
正しいリブランド戦略で企業のイメージアップを図ろう!
リブランドを行うと、企業の根幹となる企業理念を大事にしながら顧客や消費者に自社の魅力をアピールできます。
リブランドを成功させるためには、現状分析をして理想と現状のギャップを埋めることが重要です。
プロジェクトとして組織立ってリブランディングを進めることで、客観的な視点からブランドを見つめなおせるでしょう。
リブランドに成功した企業は、従来から培ってきたブランドを大事にしているのが共通の特徴です。
古くから続いているブランドを継承しながらリブランディングを進めることが効果的といえます。
リブランドで自社ブランドを見つめなおし、効果的なブランド戦略を進めていきましょう。