IT導入補助金は、中小企業や個人事業主がITツールを導入することを支援するための制度です。
この記事では、IT導入補助金の概要や対象となる企業の条件について解説します。
IT導入補助金はいくらまで交付してくれるのか、どんなツールが補助の対象になるのか、どう申請するのかなど具体的な手続きを紹介するので、導入の参考にしてください。
IT導入補助金を活用して企業のDX化を実現しましょう。
<この記事で分かること>
・IT導入補助金とはどんな制度?
・IT導入補助金をもらえる条件とは?
・IT導入補助金の対象となるソフト一覧を知りたい!
・IT導入補助金の申請方法とは?
IT導入補助金とはどんな制度?
中小企業や中小規模事業者がIT環境を整える場合、IT導入補助金を活用できる場合があります。
活用によりDX化を推進できるでしょう。
IT導入補助金の概要
IT導入補助金は、ITツールを通じて自社の経営課題を分析して、売上アップや業務効率化につなげるための制度です。
中小企業や中小規模事業者のIT環境を整えられ、ITベンダーへの橋渡しの機能も果たしてくれます。
IT導入補助金の種類には以下3つがあります。
- 通常枠(A・B類型):ITツール導入に際する経費を一部補助する制度
- セキュリティ対策推進枠:サイバーセキュリティ対策ソフトに際する経費を一部補助する制度
- デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型):会計ソフト・受発注ソフト・決済ソフト・ECソフトの経費を一部補助する制度
IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者等のみなさまが自社の課題やニーズに合ったITツールを導入する経費の一部を補助することで、みなさまの業務効率化・売上アップをサポートするものです。
引用:IT導入補助金|一般社団法人 サービスデザイン推進協議会
DX化の促進
DX(デジタル・トランスフォーメーション)とはデジタルの力を活用して私たちの生活を良いものにしようという考え方です。
企業におけるDXでは、デジタルやITの力による業務効率改善やコスト削減策を意味します。
ITの発展や働き方改革推進の影響で、社会的にDX化が必要です。
IT導入補助金の金額はいくら?
制度によって異なりますが、IT導入補助金は最大で450万円(通常枠B類型の場合)まで受けられます。
2023年度におけるIT導入補助金は以下の通りです。
補助率はITツールを導入した経費のうち、補助が認められる割合です。
例えば、200万円のITツールを導入した場合補助率が1/2以内の場合、補助額の上限は100万円(200万円の1/2)となります。
制度 | 補助額 | 補助率 |
---|---|---|
通常枠(A類型) | 5万~150万円未満 | 1/2以内 |
通常枠(B類型) | 150万~450万円以下 | 1/2以内 |
セキュリティ対策推進枠 | 5万円~100万円 | 1/2以内 |
デジタル化基盤導入枠 | (下限なし)~350万円 | 3/4以内 |
IT導入補助金の種類と目的
IT導入補助金には次の3つがあります。
- 通常枠
- セキュリティ対策推進枠
- デジタル化基盤導入枠
それぞれ扱っているITツールの種類や補助額が違います。
それぞれの目的を確認しましょう。
通常枠(A・B類型)
IT導入補助金の通常枠は、中小企業や個人事業主がITツール導入に活用できる補助金です。
事業者がITツールを導入する際に、導入費用の最大1/2までを補助金として受け取れます。
A類型とB類型の違いは補助額です。
A類型は5万~150万円未満、B類型は150万~450万円以下の補助が受けられます。
セキュリティ対策推進枠
セキュリティ対策推進枠は、サイバーインシデントが原因で事業継続が困難になるの防ぐことを目的とした制度です。
ウイルス対策ソフトなどのセキュリティ対策ソフトについて、サービス利用料の最大1/2を100万円まで補助金として受け取れます。
セキュリティ対策ソフトとして提供されているサービスが「サイバーセキュリティお助け隊サービス」です。
サイバーセキュリティ対策に不可欠なサービスをワンパッケージで安価に提供しているサービスで、少ない負担でセキュリティ対策をサポートします。
対象となるITツールは各都道府県に異なりますが、ここでは一例を紹介します。
セキュリティ対策となるツールがパッケージされており、このソフト1つで企業のセキュリティ対策をカバー可能です。
「CSPサイバーガード」(CSPセントラル警備保障株式会社) 機能1.見守りサービス 機能2.お知らせサービス 機能3.駆けつけサービス 機能4.相談受付サービス 機能5.簡易サイバー保険 【月額費用:9,800円(税抜)】
参考:CSPサイバーガード|CSPセントラル警備保障株式会社
サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト|独立行政法人情報処理推進機構(IPA)
デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)
デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)はインボイス制度を見据えた、企業間取引のデジタル化をサポートする制度です。
デジタル化基盤導入枠と通常枠(A類型・B類型)で違いがあります。
デジタル化基盤導入枠で取り扱っているのが会計ソフト・受発注ソフト・決済ソフト・ECソフトです。
IT導入補助金の対象企業の条件
IT導入補助金は、あくまで中小企業や中小規模事業者向けの制度なので、大企業や規模の大きい会社は制度を活用できません。
資本金や従業員で企業規模が判定されます。
以下は2023年度におけるIT導入補助金の対象となる中小企業の条件です。
業種・組織形態 | 資本金 (資本の額又は出資の総額) | 従業員(常勤) |
---|---|---|
製造業、建設業、運輸業 | 3億円 | 300人 |
卸売業 | 1億円 | 100人 |
サービス業 (ソフトウエア業、情報処理サービス業、旅館業を除く) | 5,000万円 | 100人 |
小売業 | 5,000万円 | 50人 |
ゴム製品製造業 (自動車又は航空機用タイヤ及びチューブ製造業並びに工業用ベルト製造業を除く) | 3億円 | 900人 |
ソフトウエア業又は情報処理サービス業 | 3億円 | 300人 |
旅館業 | 5,000万円 | 200人 |
その他の業種(上記以外) | 3億円 | 300人 |
補助対象経費
IT導入補助金の補助対象となる経費は、ITツールなどソフトウェアの導入費用に限られます。
パソコンやネットワーク環境など、ハードウェアの部分は補助対象となりません。
また、補助対象となるITツールは登録されているものに限られます。
ハードウェア購入費用
デジタル化基盤導入類型ではハードウェア購入費用の補助金を受け取れます。
補助の種類 | ||
---|---|---|
PC・タブレット・プリンター・スキャナー・複合機 | 補助率1/2以内 | 補助上限額10万円 |
レジ・券売機等: | 補助率1/2以内 | 補助上限額20万円 |
IT導入補助金の活用事例
IT導入補助金では、企業の業務効率化や売上アップに役立てるツールを導入できます。
IT導入補助金を導入した活用事例をいくつか見ていきましょう。
経営の見える化
卸・小売業では、得意先の需要予測や仕入単価に関するデータを分析し、適切な販売活動に役立てられています。
経営を見える化することによってビジネスの課題が浮き彫りになるのです。
「発注・仕入・買掛・支払管理、採算管理(原価計算)、顧客管理(基本情報、購買履歴等)」といった情報を発注から原価計算まで一元管理を実現。
ITツールの活用によって生産性の向上や勤務時間の削減、売上アップに貢献しています。
【IT導入補助金を活用した卸・小売業に関するデータ】
生産性:20.47%向上
勤務時間:1.71%短縮
売上:15.43%アップ!
(出典:IT導入補助金)
働き方改革
業務効率を改善する際に課題となるのが、従業員の勤務時間に関する問題です。
近年では「働き方改革」として残業時間の削減が求められています。
しかしITツールを導入すると、勤務時間の削減が可能です。
ある会社では、IT導入補助金を活用して給与管理システムを導入しました。
タイムカードと給与管理システムを連携すると、勤務時間の入力作業や集計作業が軽減されます。
勤務時間の条件も一目で分かるようになりました。
自動化による業務効率化
ITツールを導入すれば業務を自動化して業務効率化に役立てられます。
RPAやAIの活用で事務作業を自動化すると、作業時間の短縮が可能です。
今まで人がやっていた業務を機械によって自動化すれば、作業工数の大幅短縮が見込めます。
【RPAとは】 RPA(Robotic Process Automation)はロボットによってオフィス業務を自動化するツールです。 人工知能(AI)や機械学習などの認知技術を活用し、これまで人がやっていた作業を機械で自動化します。 RPAの導入によって業務効率を大幅に改善できます。 【RPAの活用例】 ・経費精算の自動化によって入力作業や承認業務を簡略化 ・OCR(画像の読み取り)によって経理入力業務の自動化 ・作業指示書の作成によって事務作業を自動化
IT導入補助金の申請方法
IT導入補助金は、事業者とITベンダーが共同作業で申請作業を進めます。
ここでは、事業者側が行うべき手続きについて確認しましょう。
ITツールを選定する
補助金の申請を行う準備として、自社にフィットしたITツールを選定します。
経営課題を把握し解決するためのツールとして、適切なITベンダーやITソフトを探しましょう。
IT導入補助金の対象ソフト一覧
IT導入支援事業者やITツールは限定されます。
IT導入支援事業者やツール一覧は、以下のサービスページから確認可能です。
外部リンク:IT導入支援事業者・ITツール検索
申請する
申請するITツールが決定したらWeb上で申請手続きを行いましょう。
「gBizIDプライム」アカウント(ID・パスワード等)の取得が必要です。
gBizIDはWeb上でさまざまな行政サービスの申請を行うためのサービスです。
外部リンク:gBizID
申請には「SECURITY ACTION」の実施(申請要件)、「みらデジ」の「経営チェック」の実施が必要条件となります。
「SECURIY ACTION」とは情報セキュリティ対策に取り組むことを自己宣言する制度です。
採択・ITツールの契約
ITツールを申し込むと、IT導入支援事業者から『申請マイページ』への招待があります。
交付申請に必要な情報入力や書類添削を行ったら、必要な手続きや宣誓を行ったのちに事務局へ提出しましょう。
交付が決定したら事務局から「交付決定」の案内が来ます。
所定の手続きに従って契約を進めてください。
ただし決定の通知が来る前に契約を締結すると補助金の交付が受けられないため注意が必要です。
事業の実施・実績報告
ITツールを導入した後は事業を実施し、ITツールを導入した実績を報告しましょう。
実績報告ではITツールを実際に利用したことを確認します。
補助金の交付
実績報告が完了し、事務局に受理されたら補助金が交付されます。
IT導入補助金を導入してDX化を実現しよう!
IT導入補助金は、中小企業や中小規模事業者のIT環境を改善するために役立つ制度です。
RPAやAIをはじめとする、ITの発展によってできることが増えています。
事業にITツールを導入すれば、業務効率の大幅改善が期待できるでしょう。
IT導入補助金の申請は、ITベンダーと協力したうえで適切な事務手続きが必要です。
便利な制度を活用して、自社のIT環境を改善させましょう。