資本提携とはどのようなものなのでしょうか。
この記事では「資本提携とは?」について紹介していきます。
資本提携とは、複数の企業がノウハウや技術、資金などを提供し合って、相乗効果の獲得を目指す協力関係のことです。
また「資本提携のメリット・デメリット」や「資本提携の流れ」についても解説します。
ぜひこの記事を参考に、資本提携について理解を深めてみてください。
資本提携とは?
資本提携とは、経営権を取得せずに他企業の株式を持って出資して協力関係を築く手法です。
通常は一方の企業だけが株式を持ちますが、両企業が互いの株式を持ち合うケースも見られます。
業務上の支援や資本の強化などが目的で資本提携をしている企業も多いでしょう。
資本を提供しなくても業務提供自体は可能です。
しかし強固な関係を構築しづらいというデメリットがあります。
将来的なM&Aや合併などを見据えるなら、資本提携を考えるのもよいでしょう。
資本提携のメリット
資本提携のメリットには、主に以下4つが挙げられます。
- 出資比率を低く抑えられる
- シナジー効果を創出しやすくなる
- チャレンジしやすくなる
- 各社の独立性が保てる
それぞれのメリットについて紹介していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
出資比率を低く抑えられる
資本提携は出資比率を低く抑えられるので、事業が上手くいかない場合でも、負債を負うリスクを抑えられます。
株式交換や株式譲渡などで子会社化してしまうと、出資比率が高くなってしまったり、大きな負債を負ってしまうかもしれません。
ただし技術支援や20%以上の議決権を持っているなど、経営に関わる重要な影響を与えてしまうと持株法適用会社になり、投資有価証券残高に影響が出る可能性があるので注意が必要です。
シナジー効果を創出しやすくなる
資本提携で両者の強固な関係性が築けると、事業が軌道に乗ったり取引が有利に進められたりするなど、シナジー効果を創出しやすくなるのもメリットです。
業務の一部を提携するだけでなく提携する企業に株式も譲渡するので、経営に関わるサポートを受けやすくなります。
また、提携している企業が高いブランド力を持っている場合には、自社のブランディング力向上にもつなげることが可能です。
業務効率化や業績向上はもちろん、自社の企業価値を高めるなどの良い影響を与えられます。
チャレンジしやすくなる
資本提携は、資本金額が増えて財務基盤が強化され、経営リスクを低減できるので、ビジネスでチャレンジしやすくなるのがメリットです。
提供している企業と協力して新規事業に投資ができるので、コストを最小限に抑えられます。
また生産性の向上や事業部門の集約などによって業務効率ができ、新規事業の人員配置がしやすいのもメリットだといえるでしょう。
各社の独立性が保てる
資本提携は各社の独立性が保てるので、お互いのブランド力を活かせるメリットもあります。
株主は持株比率によって、以下のような権限の行使が可能です。
持ち株率 | 権限 |
---|---|
1% | 取締役会設置会社における株主総会の議案請求権 (定款で定めがない限り、6か月以上の保有が必要)(会社法303条2項) |
3% | 株主総会の招集請求権 (定款で定めがない限り、6か月以上の保有が必要)(会社法297条1項) 会計帳簿の閲覧及び謄写請求権(会社法433条1項) |
33.4% (3分の1) | 株主総会の特別決議を単独で否決する権限 |
50% (2分の1) | 取締役の選任、解任などの会社の意思決定が可能 株主総会の普通決議を単独で可決する権限(会社法309条1項) |
66.7% (3分の1) | 株主総会の特別決議を単独で可決する権限(会社法309条2項) 具体的には以下が挙げられます。 ・事業譲渡(会社法467条1項) ・自己株式の取得に関する事項決定 ・募集株式の募集事項の決定 ・合併や会社分割などの組織変更の決定 |
100% | すべての事故意思で決定ができ、完全子会社化も可能 |
上記のように、持ち株率によって権限が異なるので、資本提携では譲渡する株式を発行済株式総数の3分の1未満に抑えることが一般的とされています。
資本提携のデメリット
資本提携のデメリットを把握しておくと、ムダなコストがかかってしまったり、株式の株価が下落したりするリスクを減らせます。
具体的な資本提携のデメリットについては、以下が挙げられます。
- 株式購入のために資金が必要になる
- 出資元企業が経営に介入してくる可能性があ
- 提携解消時に株式買取を求められる
それぞれのデメリットについて紹介していきますので、これから資本提携を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
株式購入のために資金が必要になる
資本提携は株式購入のために資金が必要なのがデメリットです。
企業買収ほどの資金は必要ありませんが、株式を取得する資金を用意する必要があります。
取得した株式の株価が下落してしまった場合には含み損を抱えてしまうリスクもあるので、くれぐれも注意しましょう。
しかし自己株式を対価に株式交換を行う場合には資金を用意する必要がなくなります。
すぐに資金を準備できない会社にはおすすめのやり方です。
出資元企業が経営に介入してくる可能性がある
資金提携は提携先によっては経営方針や実績に介入してくる可能性があるのもデメリットです。
基本的に資本提携では、提携先に譲渡する株式を発行済株式総数の3分の1未満に抑えるのが一般的なので、会社経営に関わる干渉を受けることはありません。
他社の資本が入ってしまうと、自社の情報が漏れてしまうリスクもあります。
機密情報などの情報開示範囲や、出資率などが十分に検討する必要があるでしょう。
資本提携は業務提携に比べて関係性を強固にできるメリットがあります。
ただし自社だけで経営を進めにくくなり、自由度が下がってしまうかもしれません。
提携解消時に株式買取を求められる
資本提携では、解消時に譲渡した自社株式の買取を求められるのもデメリットです。
全額一括現金で用意するのが難しいケースも少なくありません。
また提携時の株価と買い戻し時の時価との間に大きな差額がある場合には、両社で買い戻し金額を決めるので、資本を受けた金額よりも高額になってしまうリスクもあります。
メリットだけでなく、解消時のデメリットも含めて資本提携を実行するか十分に検討しましょう。
資本提携の流れ
資本提携の流れを把握しておくと、ムダな手間やコストをかけずにスムーズに資本提携をすることにつながります。
具体的な資本提携の流れについては、以下が挙げられます。
- 資本提携の目的を明確にする
- 資本提携の企業を探す
- 資本提携の詳細を決定する
- 提携条件の擦り合せ
- 契約を締結する
それぞれの項目について紹介していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
1.資本提携の目的を明確にする
まずは、資本提携を行う目的を明確にして、自社でやるべきことを把握しておくことが必要です。
資本提携後の目標売上などの具体的な数値を設定しましょう。
自社が得意としている強みやポジションを十分に理解し、足りない部分を正確に把握すると、提携先の会社を選ぶ判断要素になります。
目的があやふやなままでは、資本提携によって自社のブランド力を下げてしまうリスクがあるので、資本提携の目的と戦略は明確にしておきましょう。
2.資本提携の企業を探す
資本提携の目的を明確にできたら、自社にとってプラスになるノウハウやブランディング力を持っていたり、弱みを補ってくれるシナジー効果を獲得しやすかったりする資本提携の企業を探します。
候補になる企業が見つかったら、その企業に自社の強みや資本提携後の戦略について具体的に伝えて、交渉を行いましょう。
しかし、資本提携先を探す際には、インターネットだけで詳細情報を把握するのは困難です。
資本提携やM&Aなどに詳しい専門家への相談や依頼も検討することをおすすめします。
3.資本提携の詳細を決定する
資本提供先の企業が見つかったら、資本提携後のトラブルを防ぐためにも、資本出資比率や提携する範囲などの決定をします。
発行済株式総数の3分の1を超える資金を受けてしまうと、経営に関わる干渉を受けてしまうので注意が必要です。
しかし、資本出資比率が低すぎてしまうと業務提携と似たような条件になってしまうので、資本出資は低すぎず高すぎないように設定しましょう。
提携の範囲については、業務範囲や経営資源の供出など、お互いにとってメリットがある提携範囲を決めるのが重要なポイントと言えます。
4.提携条件の擦り合せ
資本提携の詳細が決定したら、提携先の企業と提携条件の擦り合せを行います。
お互いが理想的な条件に運ぶケースは少ないので、譲れない部分をしっかりと主張し、妥協するポイントを決めるなどの歩み寄るのが重要です。
また、資本提携が進むにつれて、お互いの考え方や意見などに違いが必ず出てくるので、納得がいくまで十分に話し合いを行いましょう。
5.契約を締結する
提携条件が決定したら、資本提携契約書を作成して契約を締結します。
資本提携契約書には、一般的に以下の項目が記されます。
- 契約の目的
- 契約に関する概要(企業名称・所在地・代表取締役社長の氏名など)
- 業務内容と役割・責任
- 提携の期間や提携の日程
- 収益の分配、費用負担に関する条項
- 知的財産権の帰属に関する条項
- 秘密保持の義務
お互いの合意があれば契約内容が決定します。
資本提携契約書では会社法などで定められている明確な定義がないので、契約内容はしっかりと確認しておきましょう。
資本提携の種類
資本提携には、主に以下3つの種類があります。
- 生産提携
- 技術提供
- 販売提供
それぞれの種類について紹介していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
生産提携
生産提携とは、提携先企業に自社が製造する製品の生産工程の一部を委託するものです。
委託する企業側には、設備投資が必要ないというメリットがあります。
ただし受託する企業に対し、製造方法や技術情報などの開示が必要です。
自社独自のノウハウが受託企業以外にも知られてしまうリスクがあるので、秘密保守契約を締結するようにしましょう。
技術提供
提携先企業が持っている技術やノウハウを活用して、新しい商品やサービスを開発するのが技術提供です。
契約内容によって異なりますが、ライセンス契約や共同研究契約などが挙げられます。
自社が持っていない技術やノウハウを利用できるのが大きなメリットです。
効率よく商品やサービスの開発を行えるのでスピーディーなビジネス展開ができ、トレンドにも乗りやすいでしょう。
販売提供
販売提供とは、提携先企業が持っているネットショップや店舗などを利用して、自社商品やサービスをマーケット進出させる提携方法です。
経営ノウハウを提供する「フランチャイズ契約」や、商品メーカーの代わりに販売する「代理店契約」などが挙げられます。
高いシナジー効果が期待でき、売上や収益に大きな効果をもたらすのはもちろん、必要なコストの大幅な削減効果にも期待できるでしょう。
資本提携について理解を深めよう!
今回は、資本提携について知りたい方に向けて、メリット・デメリットや流れを紹介しました。
資本提携のメリットについては、主に以下4つが挙げられます。
- 出資比率を低く抑えられる
- シナジー効果を創出しやすくなる
- チャレンジしやすくなる
- 各社の独立性が保てる
流れを把握しておくと、ムダな手間やコストをかけずにスムーズに資本提携できます。
今回の記事を参考に、資本提携について理解を深めてみてください。